ソリューション

下呂市教育委員会

FirstClassを利用した教育情報ネットワーク 『MAIN』

田口正邦教育長岐阜県下呂市教育委員会
田口正邦教育長

平成7年に教育情報ネット構築を主導して以来、現在まで一貫してMAINの運用を指揮している。

 

MAIN の誕生(FirstClassの採用)

MAIN の誕生MAINは、益田先進情報ネットワーク(Mashita Advanced Information Network)の略で、下呂市(旧益田郡)の小中学校22校および教育委員会を相互に結ぶ、教育情報ネットワークです。旧下呂町で平成7年度に採用された下呂町教育ネットワーク(FirstClassによる学校間ネットワーク)が、平成12年度に益田郡で教育ネットワークとして全面採用されMAINとして運用を開始、平成16年の町村合併による下呂市誕生を経て現在に至っています。

 

MAIN 設置の目的(1) 児童生徒の実践的情報教育の場

下呂市では義務教育9年間の情報教育カリキュラムを作成し、市内全学校で足並みをそろえて情報教育の授業を行っています。その授業実施に際して、実践的インターネット学習の場として、MAINを位置づけています。児童生徒が失敗を恐れることなく、のびのびとネットワーク上で活動できる授業実践が可能になりました。

小学校5年生以上の全児童、中学校全生徒に対して一人1アカウント(総数2,207アカウント)を支給しています。

MAIN 設置の目的(2) 教職員の主要情報交流の場

FirstClass採用当時、e-mailによる情報交流システムが研究されましたが、e-mailにはいろいろな問題が挙げられました。最終的には3点の問題に絞られ、解決の道が模索されました。1点目がメール分類の煩雑さ、2点目が確実性の欠如、3点目がコストでした。これら問題点に対して、FirstClassのみが全てを解決できました。1点目の煩雑さについては掲示板機能により。2点目の確実性については履歴機能により、3点目のコストについては研究所所員でも運用可能な構成により、全て解決されました。

市内小中学校全職員と教育委員会学校教育課全職員に、一人に1アカウントを支給しています(総数458アカウント)。

MAIN の現状(1) 児童生徒にとっては学校の枠を越える交流手段

小学校5年生以上の児童と中学校の全生徒は自分のアカウントを持つため、授業だけでなく休み時間にも、児童生徒専用会議室で自由な情報交流を行っています。 学校の枠を越えた交流が普通になり、中学校で初めて顔を合わせたときには、 既にお互い知り合いになっているようなことも、珍しくなくなりました。また、会議室の中は教師が定期的に巡回しているため、公共の場である会議室にふさわしくない書き込みに対しては、個別に指導を行うことができ、これが下呂市の情報教育には欠かせない要素となっています。

教科の中でも活用されています。例えば、英語教師より設置を要請された「English会議室(英語のみ許される会議室)」では、お互いの顔や表情が見えないというネットワークの制限を逆に活用し、あえて英文のみでの交流を行い、成果を上げています。 学校の枠を越えた活動が可能なので、授業の幅も広がっています。

児童生徒会議室「ひろば」の一部

MAIN の現状(2) 教職員にとっては学校にあって当然の道具

市内での公文書は全てMAINを通して送受信されています。履歴機能によって文書(メッセージ)の動きがリアルタイムで把握できるため、郵送でやりとりを行っていた時代よりも安心できるようになりました。送った文書が届いたかどうか、自分で確認できるということが、いかに仕事の効率を上げることなのかが実感できます。

教職員にとってMAINは、学校をつなぐだけのネットワークではなく、職員同士、職員と全体をつなぐ主要情報経路になっています。教材研究で助けがほしいとき、限られた相手にメールで問い合わせるよりも、MAINの会議室内で問いかければ、最大で市内約300名の教職員から支援を受けることができます。 MAINは教職員個々が持つ知的財産を共有するための具体的かつ効果的な手段となっています。

MAIN内でのメッセージとは別に、e-mail経由によってMAIN外 (下呂市内の保護者や地域、下呂市外)とのやりとりも個人アカウントで可能です。MAINのe-mailアドレスは教職員のさまざまな仕事で利用されています。こうした教職員の日常的な電子メールの利用は情報教育指導者としての資質向上にも役立っています。

今やMAINは下呂市内小中学校の職員にとって、近寄りがたい先進設備ではなく、チョークや黒板と同じような「学校にあって当然の道具」「学校にないと非常に困る道具」になっています。

教職員会議室「市-組織」の一部

MAIN の今後の方向 広げることと深めること

児童生徒同士、職員同士、児童生徒と職員の間について、MAINはほぼ完成の域に達しています。今後の方向として、「1. 広げる方向」と「2. 深める方向」の二つの方向をめざしています。

1)広げる方向としては、保護者と地域をこの中に加え、より開かれた情報交流をめざします。学校教育は学校と家庭、 地域が密接に結びついて、初めて効力を発揮します。より三者の連携を密にするため、MAINを活用するよう研究しています。

2)深める方向としては、現状の「ほぼ完成の域」から目標をさらに高く上げて、一つ上の段階へ進むことをめざします。具体的にはMAIN上で児童生徒の自治組織を構築することです。児童生徒同士、教職員同士の連携を今以上に密にしないと機能しません。困難は予想されますが、学校の枠を越えたMAINという情報手段がありますので、達成は可能と見ています。学校個々の個性を重視しつつ、下呂市全体で広く深く教育を進める、MAINがあるからこそ可能な構想です。

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